ウエスト・コーストのコンセプチュアル・アートの雄、ジョン・バルダッサーリ(John Baldessari)の限定本、「Telephone Book」。88年に限定1000部で制作され、92年に500部だけが再販されたもの。「電話帳」にひっかけたタイトルですが、中身は、様々な映画から、電話が出てくるシーンの映像ばかりを引用して編集したもの。ただ、この本の隠れタイトル(内カヴァー)は、「with pearls」となっていて、真珠が出てくる場面も混入されています(ちなみに表紙も真珠関係)。電話のコードの垂れ下がりと真珠のネックレスが形態的な韻をふむように構成されていたりして、楽しめます。
登場人物の顔が、原色に塗られた円で隠されているのは、バルダッサーリの常套手段で、映されている場面を匿名化するはたらきをしています。この作家、ニューヨークを活動拠点にしなかったので、過少評価されていますが(多少変化の兆しはあるものの)、もっと語られていい作家。そのうち、「A」でも、なにかやりたいものですが・・・。