今日は、明日から始まる境沢さんの作品の展示をしました。境沢さんの作品は、いわゆる「抽象」に見えますが、その方法は少し入り組んでいます。その絵画の生成には、ある対象をじっと見つめるという契機が介在しているからです。その対象を認知可能なように描くということではないのですが、その示唆する空間の折れ重なりが、絵を動機づけています。しかし、いったん生成の運動を開始すると、絵は、自律した筆触と色彩の交響の渦に巻き込まれていき、場合によっては、モノクロームにもみえる色彩の重なりにまで達します。動機の残響と後退。その二重の運動の交錯から発する光が、絵の具の厚みとして表面にやどります。
今回は、そういった境沢さんの制作プロセスを多元的に感じさせる―単純にプロセスを「再現」するのではない―展示を試みました(一枚一枚も、作品として自立しています)。独特の色彩と質感をちゃんと見てもらうために、今回は照明もすべて蛍光灯に変えました。こういう展示は境沢さん自身にとっても、初めての試みだそうですが、見ごたえのあるものになったと思います。ぜひ、お立ち寄りください。
また、会期がたっぷりとありますので、展示できなかった何枚かの作品を、8月16日から一部展示替えという形でご覧いただく予定です。こちらもよろしくお願いします。